小説や漫画だと、たった一人の人間が世界を大きく動かすというシーンがある。一国を救う英雄。彼の活躍により、世界は救われました……みたいな。だけど、現実はそんなに単純じゃない。
『流形の荒野』を見た。田村正和主演ということで、これは見なければ、と。でも、結局、消化不良なまんまの感じで終わってしまった感じがする。役者たちの演技はすごくいい。田村正和はいわずもがな。生田斗真も期待通り。意外と比嘉さんも上手だったし。でも、ストーリィはよく分からなかった。
何だか原作を読みたくなってしまうなあ。原作で本当にこんな風に書いていたのかなあとか。本当はもっとちゃんとした合理的な説明があったんじゃないだろうか、とか。もっと深く書いてあった、なんてことはないのかな、とか。だって、こんなんじゃ英雄になれない。野上一等書記官の決意とか行動の意味がよく分からない。もちろん、彼が英雄である必要はない。だけど、彼を英雄視する風な周囲の人間たちの感情が、いまいち、ボクに届かない。ただただ「時代に翻弄されたいい人」野上一等書記官を必要以上に美化して英雄視する周りの人間たち。そんな風に見えてしまう。
きっと、これは、あれだね。原作を読め、ということなのだ。このドラマは、松本清張の本の購買欲を掻き立てるために制作されたのだ。そして出版社や本屋さんに貢献しよう、と。つまり、まあ、そういうドラマなのだな。ふふふ。
ファンタジィは、たった一人の英雄が世界を救う。それって、ある意味、憧れるよなあ。でも、そういうのは魔王みたいな勧善懲悪の悪役が設定されていればこそ、だ。そんな風に思った次第。
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